いやかわいそうな子なんだよ。

ん、いやね。
さっきあんたも店先で会ったでしょ。
あの娘、くもりってんだけどさ。
え。
知ってる?
昔よく遊んだって?
ああそう。
いやね。あの娘ね、ちょっと前にさ、いろんなことがありすぎて。
耐えられなかったんだ。

よっぽどつらかったんだろね。
もう、あっち側に行っちゃったんだよ。あの子。

最近じゃさ、も、言うことが、全然わからない。
クォーク内部から沸いてきた青の妖精さんだの、外世界との電波通信のゲートウェイ役だの、ちょっとこっちもまともに目を合わせられなくなっちゃってね。

でもさ。
分かるでしょ。
あの子なりにいろいろ考えて、人の気を引こうとしてんだ。

さみしいんだよ。

知ってるかな。
アールピージーっとかってんだけどね、なんかそういうの。
膝突き合わせて、たられば話を延々とするんだよ。
何が面白いんだろね、お客が来るたんびにおっぱじめてさ。
まあだいたいみんな、すぐ嫌な顔して帰っちゃっうんだけどね。
なんで最後までやんないんだって、ぶうたれてたよ。
まあそうだろね。
おれもそういうのよく分かんないし。

あんたそういうの、どうかな。
いや無理にとは言わないけどね。
良かったらさ、一席つきあってあげてよ。
お茶菓子も出すからさ。

あの子はね。
ちょっと変なところはあるけど、根はいい子だから。
ほんとだよ。あんないい子はいない。
うん。
いないよ。

だからさ。
おれからこんなこと言うのもどうかとは思うけどさ。
仲良くしてあげて欲しいんだね。
頼むよ。

あ。
くもり。
どしたって?
え。
なんだって?
江川?
ああ、利根川さんとこのおじさんが来てる?
ああそう。
いまいくよ。
うん。え?
いまいくっつったの。
いまいくってだから。

いーまーいーくー!